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宝塚歌劇 初舞台特集から感化される!!愛する世界への想いと原点について

宝塚を幼少期から観ている私は、初舞台生のことは多かれ少なかれ気になることで、最近は、母の気分で見ている自分と、次のスターは誰だ?!とドラフト会議を見ている自分の側面があり、我ながら毎年春になると、「私は一体どんな立ち位置なんだよ」と自問自答しています。

 

2年間の宝塚音楽学校を卒業し、宝塚歌劇団に入団し、そして同期が全員一緒に、初舞台を踏みます。初舞台では、まず初舞台生の口上から始まり、お客様へご挨拶をし、舞台作品の中で、「初舞台ロケット」(所謂ラインダンス)を披露します。宝塚に馴染みがなく、このブログを読んでくださっている方は、以下、歌劇団の初舞台特集ページをどうぞ。

 

kageki.hankyu.co.jp

 

初舞台ロケットは毎度とにかく本当に本当に感動するのですが、私は同時に、その感動を醸成する醍醐味である、タカラヅカスカイステージ(宝塚専門チャンネル)で毎年放映される「初舞台生特集」について敢えて語りたいと思います。

ちなみに、完全なる個人的な好みの自己満足紹介なので悪しからず、お付き合いください。

 

 

毎年放送される「初舞台生特集」は、その年に初舞台を踏む期が、音楽学校を卒業してから、歌劇団へ入団し、最初のお稽古の始まりから、お衣装やロケットの楽曲の発表、ロケットの振り写し、振り付けの先生の思い、ご一緒する組の上級生への披露、初めてお化粧と衣装をつけての舞台稽古、そして初舞台初日と、彼女たちが学校を卒業して、劇団員として、初舞台を踏むまでの軌跡を放送する特集番組です。

私はこの初舞台生特集が本当に大好きで、毎年4月〜5月に、その年の初舞台生特集はもちろんですが、合わせて、過去の初舞台生特集を再放送してくれるのを、心待ちにしています。

 

初舞台生特集は、その年によって編集の方法こそ違えど、初舞台生全員の顔が映るようにできていて、(ちなみに、100期生ぐらいから、全員の顔と名前と一言の紹介をするようになりました。)そして、何より、普段は絶対に見られない舞台裏を見ることができます。

自分たちの初めての衣装や、楽譜を見た時に、感極まって泣いている子がいます。そんな嬉しい側面がある中、普段私たちファンが決して見ることができない側面、すなわち、振り付けの先生からの本当に厳しいご指導の様子や、ラインダンスを揃えるためのみんなの自主稽古や努力。

練習風景を観察していると、一回で振りを覚て、すぐにモノにしている子もいれば、一定時間同じリズムで脚を蹴り上げ続けることが辛くて、途中から脚の高さがどんどん下がっていく子もいます。先生からの厳しい言葉や、できない自分に対して悔しい思いから、泣いている子もいるし、上級生の前でのお披露目が終わり、ホッとして泣いている子もいます。

 

普段のきらびやかな素晴らしい完璧な舞台の裏に、こんなに厳しい世界があるということを、唯一垣間見れるのが「初舞台生特集」

夢のような世界を楽しませて頂いている私たちですが、その裏に隠されている一人ひとりの思いや努力や感情の動き、どんな練習をしているのか、先生の厳しさの背景にある優しさや、脚を上げることの大変さ、そして何より、一人ひとりの一生懸命さを見て、「私も頑張ろう」と思わせてくれるのです。

 

初舞台生は、ご一緒する公演に出演する組の上級生の前で、完成させた初舞台ロケットを披露します。そして、その初めての合同お稽古で、初舞台ロケットを見て、感極まって、学年に関わらず、ほとんどの上級生たちが泣いています。みんな、同じ道を通ってきたからこそ、初心を思い出していろんなことを考えて、出てくるなんとも表現し得ない涙なのでしょうか。

 

私たちの実生活、社会人としての生活においても、自分が愛した世界に身を投じ、そこでの仕事を手に入れたとしても、必ずしもそこで一生幸せでいられるとは限りません。むしろ、自分が思っていたキャリアの描き方と違う、と苦悩したり、自分はこれが誰よりも得意だったはずなのに、と、スランプに陥ったり。

キャリアにおける「ブレイクスルー」がなかなか来なくて、自分のスキルを自問したり、自分よりもうまくやっている人を見て嫉妬したり。そして、時には諦めたり。。

私たちみんな経験したことがある思いではないでしょうか。

それで、何よりも「私が何よりも愛した世界だったはずなのに、それは違ったのだろうか?」と思う時がくることはないでしょうか。背景にどんな理由があろうと、自分に自信がなくなると、自分の愛した世界が見えなくなってしまい、むしろ、そこに対して拒絶反応が起こることもあります。

 

人生ってそういうことの連続だからこそ、初心に返ることってとても大切なことなのではないかと、私は思うのです。何かのきっかけで「やっぱり私はこの世界を愛しているんだ」と思い直すことができて、もう一歩先に進む勇気を取り戻すことができるのではないかと思うのです。

 

ちなみに、過去の放送が好きな理由は、「あの素敵な上級生の方の初舞台姿が見られる(目がハート)」とか「今注目されているあの子がこんなところにいるじゃないか!!(目がハート)」とかそういう楽しさに尽きるのですが、今活躍されているタカラジェンヌ、OGも含めて、みんな、みんな通ってきた道なのだと知ることができるのは、夢の世界の中でも、現実を見せてくれている部分であり、そして、自分自身のキャリアで道に迷った時の、道しるべにもなってくれているような気がするのです。

 

「初舞台生特集」のように、いかなる組織においても、キャリア教育、今上席にいる人たちや、バリバリやっていて到底追いつけないと思うような先輩が、過去にどのような壁にぶつかり、そこから立ち上がってきたか、、、そして、彼らがその世界を愛した原点とは、、、?そんなお話を聞ける機会が増えたら、その組織に所属する若手の方々ももっと、自分に自信を持つことができるのではないかと思うのです。それに、そこから派生するキャリアの築き方の多様性、実社会で言うなれば、必ずしも管理職になることだけがキャリアではない、ということを、気づかせる手助けになると思うのです。

 

ちなみに、76期生(1990年初舞台)の、初舞台生特集で、当時現役だった若尾りささん(現在は劇団の先生として活躍中)が、初舞台生に向けて「3年ぐらいでやめようと思っている人〜 / 10年はいようと思っている人〜?」などアンケートをとる企画があったのですが、その質問で「専科に行くまでいる予定の人?」と投げかけた時に、当時の初舞台生、現在の宙組組長の寿つかささん(すっしーさん)が、手を上げていらっしゃった映像がありました。

私は初舞台を踏まれる前から、このように「ずっとこの世界にいる」と決意をされて、今は組長さんとして、実に30年、現役として舞台に、素敵なダンディな愛すべき男役さんとして、組をまとめられているすっしーさんは、とてもとても素敵だと思いますし、心から尊敬していす。

 

自分が属する組織の中でも、自分がいる世界を愛するきっかけになったもの、みんなきっと何かきっかけがあるはず。それを思い出し、そしてもう一度挑戦することや、好きだからこそ別れを告げることもあるでしょう。

初心に帰ることや、逆に、その世界での1年目の人と、自分を重ね合わせることは、自分のキャリアを作ったり、方向転換をして行く中で、とても大切なプロセスの一つかもしれません。

そんなことを毎度気づかせてくれる、宝塚の「初舞台生特集」が私は大好きです!

今年の初舞台公演は、まだ幕が開きませんが、106期生のみなさんが、宝塚で素晴らしいスタートをきられますように!公演再開と同時に、宝塚大劇場でのお披露目が観られる日を、心から待っています!!