The World of M

大好きなことやもの(演劇・読書・ときどき日常)を徒然書いています

「とにかく散歩いたしましょう」小川洋子さん著 日常での視野の広がり

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とても久しぶりの更新になってしまいました。最近「博士を愛した数式」の著者である小川洋子さんのエッセイを読み終わりました。新聞のコラムを書籍化したもので、ひとつひとつの章は4〜5ページと、とても読みやすく、小川さんのお仕事である小説の発送がどのように生まれるか、その日常から垣間見られ、大変知的好奇心が刺激されるエッセイでした。このブログを読んでくださっている方はもしかしたらその鋭い観察眼で見抜いていらっしゃるのではと思いますが、私はエッセイがとても好きです。題材が我々読者でも想像ができる中でも、物事の見方って本当に人それぞれで、そこから学ぶことが多いからなのです。

とにかく散歩いたしましょう

とにかく散歩いたしましょう

 

 

今回この本を手に取ったのは、図書館で背表紙を見ての出会いでしたが、犬の散歩に関わることかなと、他人事とは思えずにそのまま借りることにしました。もちろん小川さんの愛犬のお話もいくつかありましたが、それ以前に、小川さんの日常とそこから感じられる様々な感情、共感できるものが多くあり、とても心に栄養をもたらされた気がします。

特に小川さんのこの本で印象的だったのは、小川さんが触れられる読み物の描写が多かったことです。おなじみの本から、このエッセイを通して初めて知った本のタイトル、さらにはそれらの本の、小川さんの視点での解釈、登場人物たちとの関わり方がふんだんに織り込まれていました。

そして、それらを日常に写し、ご自身のお父様やお母様との関わりに繋がる描写は、自分の両親との関わり方を考えさせられるシーンも多々ありました。

いろんな作家の方のエッセイを読んでいますが、やはりその人その人の視点は様々で、取り上げるテーマも様々です。自分の視点の狭さ、脳みその限界を思い知らされると同時に、自分の世界を広げられるものですね。

 

このタイトルロールになっている「散歩」について、小川さんが仕事で煮詰まった時に、愛犬との何気ない散歩を通して無意識に頭をクリアにされていたという体験談が書かれていました。小川さんが感じられる「心配事」への向き合い方とその心理は、過剰な心配性である私にとって、その付き合い方と頭のスイッチの仕方へのヒントをくださったような気がします。それに、やはり散歩って大事ですね。私も犬の散歩は必ず毎日行きますが、頭の中で仕事のことをぐるぐる考えながら、でも、気がついたら思考が整理されている、不思議な効果があったりなかったりします。

 

あらゆる物事を多角的に見ることで、日常はもっと面白く好奇心あふれるものにできるものですね。皆様もぜひ手に取ってみてください。