The World of M

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大人になってから読む&観る「ハリー・ポッターと秘密の部屋」 ダイバーシティと共存

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大人になってから再度読んでいるハリー・ポッターシリーズ。本当に、子どもの頃に読んだはずなのに記憶と全然違い、経験を色々詰んだからこそ感じることも大きく違いますね。前回に続き、今回は第2作、秘密の部屋を一気に読み、そして映画も観ました。とてもとても深く、いろんなことを感じて考えあぐねていますが、今回もどうぞお付き合いください。また、あくまでも記事は私の独断と偏見に基づいた感想ですので、一個人の考え方や解釈として、楽しんでいただければと思います。

前回記事「賢者の石」についてはこちらです:

 

worldofm.hatenablog.com

 

大人になってからシリーズを再度読んでいて思うのですが、ハリー・ポッターって割と結構サスペンスや推理の要素が高いのですね。私は本当に活字の読書に苦手意識がありながらも、子どもの頃なんとか読んでいましたが、今再度読んでいて、本当に記憶と全然違う。笑。いかに子どのころ本の内容を理解していなかったがわかります。

 

2年生になったハリーは、ホグワーツの城の中にあると伝説になっている「秘密の部屋」が開けられたというメッセージがきっかけとなり、様々な事件に巻き込まれて行きます。自分の両親を殺し、自分の額に傷をつけた「例のあの人:ヴォルデモート」と、入学してから2度目の戦いに立ち向かうのです。

 

秘密の部屋で特に感じたのは、かなり辛辣に書かれている「差別」の描写についてです。真相はわかりませんが、今の時代になっても世界的に撲滅しない人種差別の描写が、学校内で行われているように感じ、人間社会を表現しているように感じました。

秘密の部屋を作ったとされる、ホグワーツの創設者の一人であるサラザール・スリザリンは、代々魔法使いの家系である「純血」の子息のみ学校に入れるべきであるという考えであり、「秘密の部屋」が開かれた時は、魔法使いの家系出身ではない、マグル家系出身の魔法使いばかりが襲われます。マグル出身者を「穢れた血」とも表現します。

そして、このお話で最後に対決するトム・リドル(後のヴォルデモート)は、母親の家系が代々魔法使いの家系で、かつ、サラザール・スリザリンの血を引く一族ですが、父親はマグルで、母親が魔法使いとわかったら、彼女の元を去っていったようです。

トム・リドルが、自身の生まれや境遇から、自分のアイデンティティに劣等感を抱いていたからこその犯行のように思えてならないのです。

ストーリーの中にも、「純血」であることを誇りに思うマルフォイが、マグル出身でも学年一の優等生であるハーマイオニーに敵意むき出しにしている様子が描写されている一方で、同じく代々魔法使いの家系であるロンは、「今時純血の方が珍しいんだ」と、マグルとの共存に大きな理解を示しています。

ダイバーシティが大々的に言われるようになったのは最近ですが、やはりどの時代も、自分が属する種にとらわれ、人一倍誇りを持っている者と、共存について寛容な者がいるものです。これは人種のみならず、昨今だとLGBTQに謳われる性についても同じことが言えるように思います。

「賢者の石」では、ハリーが自分のルーツを探し、自分のアイデンティティを見つけていく過程に感動しましたが、「秘密の部屋」では、その新しい世界の中でも差別社会があり、そこに居合わせた魔法使いたちが様々に苦悩している様が描かれているように思いました。

 

次に、魔法使いの先生たちの生きづらそうな政治の描写がまた、大人になってみると辛辣に感じられて面白いですね。秘密の部屋が開けられ、生徒たちに被害が及ぶようになり、50年前に罪を着せられたハグリットが、いわば政治的パフォーマンスのために連行され、アズカバンに収容されます。最終的には無実であることが証明されますが、その連行されるシーンは、大臣や学校理事たちが、不満の声を上げる世間に対し、「何か行動をしている」と見せつけるために行うパフォーマンスそのものです。思い返してみれば、この大人の汚さというのは、子どもの頃は1ミリも理解していなかった内容ですね。いつの時代も、魔法使いの世界であっても、やはりパフォーマンスは何かしら工作され、罪のない誰かが犠牲になることもあるのですね。もちろん、ストーリーの中のフィクションですが、人間の闇を感じられる描写になっていて面白みがあったのと同時に、魔法使いだったとしても大人はやっぱり大変だな・・と感じざるをえませんでした。

 

最後に、とても感動したシーンをひとつ。ハリーが、自分は本当はグリフィンドールではなくスリザリンに入るべきだったのではないかと悩みますが、そんな彼にダンブルドア校長は、「自分が誰かを決めるのは、能力ではなく、自分の選択である」という言葉をかけます。寮を決める組み分け帽子は、ハリーに「スリザリンでも成功する能力を持っている」と言うのに対し、ハリーは「スリザリンはいやだ」と懇願したため、グリフィンドールに配属になります。まさに、持って生まれた能力を、どこで発揮するかの大切さを教える大変素晴らしい言葉だと思いました。自分の能力を、どんなフィールドで発揮するかはその人次第。理系の頭を持ちながら、文系のお仕事で大活躍する方もいれば、文系脳だけど理系の製品を扱う会社で成功する方もいます。まさに、自分が活躍できるフィールドを自分で選ぶことで、自分の人生を切り開いていく、素晴らしい教えでした。キャリアや生き方迷子になりがちな30歳の私にとって、とても出会えてよかった一節です。

 

それにしても本当に、経験を積んでから再度読む本は、新たな気づきがたくさんあって本当に面白いです。映画も併せて観ましたが、一生懸命観ていた子ども時代とは全く違う印象で、当時本当にこの内容を理解していたとは到底思えないほどでした。また、子どもの目線だけでなく、先生たちの目線で、ホグワーツの生徒たちが先生に対して反発することや、その先生方の行動の背景などは、両方の気持ちが理解できるようになったのも、また新たな本の楽しみ方の一つですね。

 

さて、私は子ども時代、炎のゴブレットの途中で、本は挫折しており、映画も秘密の部屋を最後に観ていません。今日から、アズカバンの囚人を読み始めましたが、これから私自身、新しい内容のお話や映画に出会っていくことがとても楽しみです。これからもどうぞお付き合いください。

 

 

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