The World of M

大好きなことやもの(演劇・読書・ときどき日常)を徒然書いています

「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」先崎学さん著 病気の実態を世の中に広める大変貴重な実体験エッセイ

本当に最近無気力続きで、ブログのエントリーもできずにいましたが、少しずつ気力を取り戻し始めたのでまた何か書いて行きたいなと思います。

私のブログのネタって、本や演劇などの内容を独自目線で考察したり、感想をお伝えしたり、が主なので(一部愛犬日記もありますが)、そのネタになるものを探して色々考えを巡らせると、とても体力を使うのです。

なぜそんなことを冒頭からお話しするかというと、今日ご紹介する本

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」

に繋がるからです。

 

将棋界の先崎学さんが記された、うつ病を発症されてからの体験談エッセイです。

快活な文章で大変読みやすく、日常に合わせて包み隠さず書かれているため、大変想像がしやすい本です。

 

 

 ⭐️本の概要(Amazonより)⭐️

「ふざけんな、ふざけんな、みんないい思いをしやがって」
藤井フィーバーに沸く将棋界で、突然、羽生世代の有名棋士の休場が発表されました。
様々な憶測が流れましたが、その人、先崎九段は「うつ病」と闘っていたのです。
孤独の苦しみ、将棋が指せなくなるという恐怖、そして復帰への焦り……。
体験した者でなければなかなか理解されにくいこの病について、エッセイの名手でもある先崎さんが、発症から回復までを細やかに、淡々と綴ります。
心揺さぶられること、必至!

 

この本を手に取るに至った背景は、サクセスストーリーが読みたかったことにありました。私もこのコロナ渦に心身の健康に支障をきたし、大好きだった仕事と一旦距離を置く生活を、今年の6月中旬から始めました。

本屋さんでこの本を見つけたのは、7月中旬でした。休みに入って最初に焦りばかり感じていた時期で、自分と似た境遇の方がどのように健康を取り戻したか、を模索しての出会いでした。

私はうつ病との診断ではないですが、精神的に疲れが出ていた状態であることは事実で、自分がすぐに健康を取り戻すことに自信を失っていた時期だったのもあるのかもしれません。

 

私は、これだけ世間で将棋ブームがきている現在、あまり棋士の皆様については明るくなく、著者である先崎さんのことも、この本を通して知りました。

うつ病を発症されるに至る背景や、入院〜日々の治療、気持ちの浮き沈みやご自身の仕事にかける誇り、情熱が細部に記されており、大変勇気をもらう内容でした。

中でも、症状がどのように移り変わっていくかが、事細かく記されており、大変参考になりました。先崎さんのお兄様がお医者様として強く支えていらっしゃり、節々でかけられる病気に対する認識は、読み手の理解を深めるのに大変有意義な言葉がたくさんありました。

 

先崎さんが退院をされて、ご自宅での療養中の過ごし方による体調の変化は、大変想像がしやすく、おこがましいですが、自身の体調と比較するのにも大変参考になりました。少しの行動でとんでもなく疲れること、死に対する距離感。脳が身体を守るために起こす様々な感情。

いかなる病気においても、自分自身がそれを体験しないと、その苦しみはわからないものです。自分が毎日を難なく過ごせる状態にあるときは尚更、自分が心身ともに健康であるということが当たり前と思っています。そんな中で、病気に対する理解を深めることは大いに難しく、逆に自分が病気になって初めて、それまで理解をしてこなかったことを後悔します。

 

私も今回自分が想像もしてなかったほどの意欲低下を経験し、自分の好きなこともできない状況も経験しました。何より大好きだったはずの仕事と距離を置くことになったのは、自分の収入だけではなく、将来を考えた時に焦りを感じます。

本の一節に、「医者は患者を自殺させないためにある」という、先崎さんのお兄様の言葉があります。逆に、自殺さえしなければうつ病は必ず治る、人間はその自然治癒力を持っているとも。

何事においても、自分の身体がSOSを出していることに気がつき、しっかりと休養をとり、元気になったらまた歩き出せば良いのです。頑張りすぎている時、それを忘れてしまいがちな現代社会の私たちです。自分の気持ちの持ちようだけではなく、社会が立ち止まることを許さない風潮は、少なからずあるのかもしれません。ですが、この本を通して病気の実情を少しでも知る方が世の中に増えて、もっとお互いに優しい社会が作っていけると良いですよね。

 

ちなみに私は、この本に書いてある真逆のこと、つまり、お休みが始まってからはとにかく休む、ではなく、今までできなかった自分のやりたかったことを片っ端からやる、というスタートを切りました。このブログも、毎日仕事をするというリズムを崩さないために書き始めたという背景もあります。多分、本当に収入減への焦りと、他に何かできることを探したかったからなのですが、今思うと、途中でなかなか意欲が出ない期間もあり、最初からしっかり休んでおくべきだったのだなと思います。

少しずつ、「退屈」を感じ始めた今、これがまさに、回復している証拠なのです。おそらくここでまたスピードを上げると、またすぐパンクしてしまうかもしれないので、焦らず、少しずつ、着実にできることをこなしていく。それをモットーに日々を送っています。仕事も、大好きな宝塚も、笑顔で元気に、適度に力を抜きながら過ごせる日がくるのが今は楽しみです。

 

改めて、この本は快活な文章で大変読みやすく、日常に合わせて包み隠さず書かれているため、大変想像がしやすい本です。病気の経験者の方は、勇気がもらえる内容かと思いますし、そうでない方も、理解を深めるのに大変有意義な本だと思います。

ぜひお手にとってみてください!