The World of M

大好きなことやもの(演劇・読書・ときどき日常)を徒然書いています

「あたしたちよくやってる」山内マリコさん著 女性の人生、自分らしさを思い出すこと

こちらも本屋さんでたまたま通りかかり、タイトルにあまりにも惹かれて「ジャケ買い」しました。

山内さんは小説家・エッセイストとしてご活躍されており、小説のみならず、様々な雑誌にアンソロジーをはじめとするエッセイを執筆されているのですね。改めて山内さんのウィキペディアでご経歴を拝見し、この本に書かれているストーリーのひとつひとつが、山内さんご本人の人生を写しているのかなと、想像を掻き立てられました。

この本は、様々な短編エッセイ、コラム、短編小説が盛り込まれている構成になっていまして、大変読みやすく、そして女性として共感できる複雑な感情の数々が描かれていました。

 

本当に私は、自分のことを労いたい気持ちで、このタイトルにあまりにも惹かれて読むに至りましたが、どの年齢になってもその時、その時で感じるであろう感情や考えの移り変わり、自分が経験したことのある感情、これから経験するであろう感情に、大変共感を覚えました。

いつも通りネタバレ少し含みます。ご興味のある方は、続きを読むからぜひご覧ください。

 

 

あたしたちよくやってる

あたしたちよくやってる

 

 

そもそも、私は今現在、完全に仕事の燃え尽き症候群に陥っている30歳の女性です。

仕事は外から見たら華やかな世界のコーポレート職。大学を卒業してから、その業界で働くことにずっと情熱を燃やし、がむしゃらにやってきました。しかし、経験を重ねるにつれて、「何か違うかも」と思い始めます。情熱は薄れ始めます。でも、目の前にやらなければいけないことは山積みで、仕事を断れない性分(というか、断ってはいけないという思い込み)から、全てを完璧にこなさなければ気が済まず、分刻みで毎日をこなす日々。会社から自分にしてもらった投資のことを考えると、絶対に「ノー」は言えない。。そんな中、過労で会社に行けなくなりました。

 

恋愛は、学生時代に本当にたくさんしましたが、今思い返してみると、本当に好きだった人はその中でも少数で、本当は東京で一人暮らしをしていて、寂しかっただけなのかもしれません。

仕事をするようになると、仕事に情熱を持って生きるようになり、学生時代に最優先事項だった恋愛はいつしか2番手に降格しました。仕事に依存しながら、大好きな宝塚を観て、自分のお給料を好きに使う生活に優越感を覚えていました。早く結婚していく友達をなんとなく横目で見て、自分は恋愛は好きだったけど結婚をする想像はできないな、と考えながら、みんなのお祝いをし、20代は駆け抜けて行きました。

そんな中、息が詰まるようになる仕事の仕方をする性分の私に、力の抜き方を教えてくれる人と巡り会いました。結婚は去年、29歳でしましたが、仲の良い友人たちのグループ内では一番最後でした。

 

そんな燃え尽き症候群になった私に、語りかけてきたのが「あたしたちよくやってる」というこの本のタイトルです。そうじゃん、私よくやってるよ、やってきたし、会社でわけわからない気の使い方しても、嫌と言わずにずっとやってきた。

自分をいたわるヒントが欲しくて、この本を手に取りました。

 

この本の中には、10代から20代前半の多感な時期に、自分が持っていた根拠のない自信。「自分は何にでもなれる」と思って疑わなかったあの頃のこと。結婚をしていく友人たちの中で、全く結婚に興味が持てなかった時代の自分。そして、仕事で成功していて、お給料を好きなように使える優越感。そしてぶち当たった、何も手につかない今の状況。

きっと人間は、He / She / They 関係なく、何かのタイミングで何かを悟るのだと思います。それが、自分が思い描いた世界と違う場所にいることに気が付いた時や、急に自分のやっていることが手につかなくなること。

 

そんな時、「自分って本当はどんな人だったんだっけ」と一歩立ち止まり、自分らしさについて考えること。これは最近、友人からももらったアドバイスのひとつです。でも、本当にそうで、それこそが自分の心の均衡を保つ鍵であり、最終的には「自分らしい生き方」をすることが、人間の本当の幸せなのではないかと思わされました。

 

この本には、自分が今まで通ってきたいろんな感情、そしてこれから出会うであろうことが、容易に想像できる、まだ体験したことのない感情が、たくさん詰まっていました。

いろんなお話を通して、もう一度「自分らしさ」を見つけよう。もう一度見つめよう。そう思わせてもらえた一冊でした。

 

それにしても、改めてこの本のタイトルのインパクトの強さに、ただただ感銘を受けるばかりです。自分が今おかれた状況の中で、自分らしさを見つけるために、もう一度前を向きましょう。幅広い年代の女性に特に読んでいただきたい一冊でした。どうぞご興味がある方は手にとって見てくださいね。