「47都道府県女ひとりで行ってみよう 」益田ミリさん著 旅気分と自分らしさ、旅先で見る日常
自粛生活の中で、本屋さんで見つけて手に取りました。旅気分を味わいたいと思ってジャケ買いしましたが、旅を通して自己表現をする著者の益田さんから多くを教わり、新たな物事の見方や考え方を学びました。旅エッセイですが、一人で日本全国47都道府県を巡るなど、人生でなかなかできないことです。「旅ってこうじゃなきゃいけない」という考え方を覆された、新たな旅の楽しみ方満載のエッセイです。
私たちの固定観念の中で、それぞれ持っているだろう「旅はこうでなければいけない」というもの、どんなものがありますか?
私は、例えば・・・
- 旅は終始喜びに溢れていなければいけない
- エネルギッシュでなければいけない
- ご当地のものを食べなければいけない
- 有名観光地に行かなければいけない
などなど・・。多分こういう思いや考えは、楽しそうな旅番組で、現地の美味しいものをレポートしたり、その土地の有名観光地の素晴らしさを伝えていたり、そんなところから自然と身についている考えなのかもしれません。
実際どんな旅にも、そんな期待を込めていくところもきっとありますよね。
私はこの益田さんのエッセイを読んで、旅の楽しみ方が、「こうでなければいけない」という考えから、「人それぞれいろんな楽しみ方があるんだなあ。自分も肩の力抜いて自分なりに楽しんでいいんだなあ」という考えに大きく変わりました。
例えば、本の中で、海産物が有名な旅先に行ったとしても、それが苦手な益田さんは無理に有名だからとご当地品を食べようとしなかったり、夜は街に繰り出す代わりに、ホテルでゆったり好きに過ごされたり。
旅はその時の自分の心身の栄養になるために、現実から離れてゆったり過ごすという楽しみ方でも良いのだなと心から感じました。
この本は、47都道府県を益田さんが33歳から37歳にかけて、毎月1都道府県どこかを選んで、そこで体験された内容の記録という構成になっています。旅のフォーマットも定型化されていなく様々で、ふらっと日帰りで楽しまれる回もあれば、目的を持って3日間かけて行かれる回もあり、様々です。一つの記録がだいたい4〜5ページになので、私は短い通勤(電車に乗っている時間は正味10分なのです)の中で1〜2話読んで、かつその時間で軽く旅をした気分になれたので、読んでいてとても楽しかったです。
それに、書いてある内容も、その旅先のことに特化しているというよりは、そこで起こった出来事に対して、益田さんが感じられたこと、気持ちの変化などが多いのも面白かった点のひとつです。その旅先の商店街で見かけた、その土地に住む方々の何気ない日常が描かれていたり、それを見て益田さんが感じられたことが描かれています。一見、似たような情景は、自分が住んでいる日常の中でも見ることができることなのです。でも、自分が日常生活に勤しんでいるときは、きっとそういう出来事に出会っても、何も感じないのかもしれない。だからこそ、旅先で見た何気ない日常は尊いのかもなあ。
それにしても私はエッセイが好きだなとつくづく思います。自分が知らない世界や気づかなかった面白いことに、自分ではない人の視点を通しで出会えます。
私はすっかりこの旅本で益田さんのエッセイのファンになり、今他の本も読んでいるところです。
旅もきっと自己表現のひとつ。固定観念に縛られることなく、自分らしく旅を楽しむことをこの本から学びました。今は旅には気軽に出られないけれど、次に旅に出るときは、私もひとりで、どこか国内で行って見たいと思います。