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「問わず語りの神田伯山」放送から感じた文化継承の在り方、メンターシップ

皆さん、講談師の神田伯山さんはご存知でしょうか?私は講談・落語などの伝統芸能には疎いのですが、伯山さんは最近メディア露出も多くていらっしゃるのと、私の夫がファンであるため、毎週伯山さんのラジオを聞くのが習慣となっています。

昨日(2020年6月26日)の放送が、組織で働く一サラリーマンとして、大変感銘を受ける内容となっていましたので、本日はそのご紹介を致します。PodCastもあるようです。

 

www.tbsradio.jp

 

 

伯山さんは最近様々なメディアで取り上げられている講談師です。私も、普通に生活していて、全く馴染がなかった、「講談」という世界を、伯山さんを通して知ることになりました。

 

昨日のラジオ放送では、20代前半の方が、わざわざ地方から東京に出てきて、「弟子にして欲しい」と伯山さんにお願いをされた、というお話を軸に、ラジオのトークが進んでいきました。

そこで、昨今の「お笑い芸人」の世界と、「落語・講談」の世界との違いの一つとして、「師弟制度」についてお話がありました。

昔は、お笑い芸人の方々の世界でも、「師弟制度」があったが、いつしかそれが少しずつなくなっていき、各芸能事務所が運営する「養成所」が発足していった。私なりに解釈した通りに申し上げると、その方法で「売れるタレントさん・芸人さんを発掘し、お金儲けをする」というビジネスモデルに変化していったと。

一方で、講談の世界では、今でも師弟制度というものが深く根付いており、その講談師の方が有名か否か、人気かどうかは別として、如何に次の世代を育て上げたかが大きな意味を持つ。即ち、そのようにして、伝統芸能が長く続いていくと。

 

「伝統を守るための師弟制度」を企業組織に置き換え、今私たちがそれぞれ属している組織は、「未来につなげていくことができる組織なのか」を考えるきっかけを、私たちに下さったのではないかと感じました。

やはり古くから形を変えても続いている企業というのは、守られている伝統や、その組織を形付け、意味づけるための価値観があり、それが継承されているからこそ、ビジネスシーンでの信頼が揺るぎないものになっている側面があるのではないでしょうか。

それに対して、やはり、今の目先の利益に囚われ、「伝統」と言いながらも、その組織たる価値観が、机上の空論になってしまっている組織は、持続可能なのでしょうか。

 

「伝統にとらわれず、新しいことに挑戦していく」ことは、いかなる組織や業界において、とても大切なことだと思います。その組織内に存在する伝統的な文化に、必要以上に固執するが故に、時代に取り残されているようでは、時代に淘汰されていきます。

しかし、守るべき伝統的な文化、即ち、その組織を意味づける価値観を大切にしながら、新しい挑戦をしていくこと。その時代にあった形でエンタテイメントやサービスを提供すること。その機会に気がつけるかどうかで、その組織の持続可能性や、次の更なる発展へのカギなのではないでしょうか。

 

私は講談という世界は、伯山さんのご出演されているテレビやラジオを拝見する機会がなかったら、触れることのないままだったと思います。しかし、ご自身の個性を生かした結果、講談という伝統芸能が、今を生きる我々に新たに認識され、注目されています。

講談の世界に伝わる、様々な伝統を、お師匠様やお兄様・お姉様に教わったことを大切にしながら、今の時代にあった個性を確立させる。そのようにして、文化は、時代に合わせた形で継承されていく。コアにあるものは形を変えずに。。

そして、その背景には、往年の講談師の方々が、次の世代へ文化を繋げていくための、様々な創意工夫と、人材育成への情熱や、素晴らしいメンターシップがあったからなのだと思います。

何かを作り上げることよりも、それを継続させていく方が、私は難しいと思います。

それでも、何十年・何百年と続いている日本の伝統芸能の世界から、私たちが学べる「メンターシップ」がきっとそこにあるはずで、だからこそ、形を変えても残り、愛され続けている多くの文化が、日本にはあるのでしょう。

 

私たちが現実の世界で所属している組織、企業においても、目先の利益だけにとらわれず、今後100年と続けていける会社になれるかどうかは、そのために社員が同じ方向を向き、同じ価値観の元に仕事でバリューが出せているかどうか。

企業文化の在り方の教育等は、今後、伝統企業でも、スタートアップでも、改めて考え、導入すべき価値観だと、私は信じています。

お金儲けの方法は、それぞれだと思いますし、正解がある話ではないと思います。

しかし、未曾有なことが多く起こる今だからこそ、組織を運営することを仕事にしている人や、組織に帰属することを選んで仕事をしている人は、改めてこの「価値観の共有」から、その組織の「文化継承」と、持続可能性を考え、伝統芸能の世界から学んでみる価値があるように思います。

 

昨今の自粛に終わりが見えながらも、新しい生活様式が求められる局面にいる私たちにとって、いつも楽しませてもらっている、様々なエンタテイメントも、コアにある伝統を守りながら、形を変えていくのでしょう。

そして、講談も含め、私が大好きな宝塚や、舞台の世界。。これからも、文化が継承されていくことを、心から切に願っています。