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「苦しかったときの話をしようか」森岡毅さん著 もう一度考える”自分の好きなこと・得意なこと”

今日は、いかなるキャリアを積んでいる方も、いかなる世代の方も、ぜひ読んでいただきたい本をご紹介させてください。「自分の職能」について考え、次のステップへ進む勇気をくれました。

 

森岡毅さんといえば、株式会社ユー・エス・ジェイユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営会社)の元CMOとして、素晴らしいご活躍をされた方という認識をしておりました。私は、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、森岡さんが取り上げられていた回を拝見しております。

敏腕のマーケターの森岡さんが、今このタイミングで就職活動を始められる、ご自身のお嬢様のために書かれた本です。実際、本屋さんの店頭では、帯に「就活生必読!」と目立つ広告が掲げられていますが、この本は、キャリアのいかなる場面・場所にいらっしゃる方でも、読んで自身を振り返り、学び、次に活かすことへのヒントが書かれています。

以下、多少ネタバレも含みますが、ぜひ私の感想を共有させてください。

苦しかったときの話をしようか

苦しかったときの話をしようか

 

この本の中では、森岡さんのビジネスパーソンとしてのご経験から、働く上での様々なヒントやアドバイスが書かれていますが、本日は、特に私の心に刺さった、「働く上での軸」「自分の職能の見つけ方・伸ばし方」そして「ご自身が苦しかったときの話」の3つについて触れさせていただきます。

 

まず、「働く上での軸」について、「どんな自分になりたいか・自分にとって大切なものは何か」を明確にしておくことの大切さについて触れられています。

もうそろそろ、「若手」とは言ってもらえなくなる世代、即ち、若手であることを言い訳にできなくなってきた、大学を卒業して8年ほどの私にとりまして、思い返してみると、私の20代はただやみくもに、目の前にあることを見よう見まねでやり、なんとか先輩がしているようにこなすことで、「仕事ができる」気になっていたように思います。

しかし、「大切にしたいもの・本当にしたいこと」はなんなのか、と問われると、即答できない自分がいました。この本は、「自分の軸」を決めておくことの大切さを最初に教えてくれます。

就活を始められるお嬢様に宛てた文調で、本は進んでいきます。そして、社会人として経験を積む中で、「軸というのは仕事をしていく中で変わっていくこと」が正しいということについても触れていらっしゃいます。

確かに、自分も就活生だった8年ほど前に思い描いていたこと(思えば、「軸」と言えるものは何もなかったかもしれません)と、今、仕事を通して、「出来ない自分」なりに様々な経験をし、「自分が人生において大切にしたいことやもの」は変わってきていると感じます。忙しい毎日で、自分が仕事を追いかけるのではなく、仕事に追われ、心が削られていく。そんな中でも、一度立ち止まり、深呼吸をして、自分の方向性(軸)を築き直し、軌道修正していくことは、間違っていないのですね。新しい自分の軸に沿って、また「働くことの意義とゴール」を見出していけば良いのです。

 

次に、「自分の職能の見つけ方・伸ばし方」についてです。人間、皆それぞれ違うので、人により、得手不得手、好きなことや苦手なこと、様々な個性を持っています。この本を読んで「ハッ」とさせられたのは、仕事を通して「自分の得意を伸ばすことに集中する」ことの重要性です。

思えば、仕事をし始めの頃は、「ちゃんと認められなければ」「使えない子と思われないようにしなければ」という思いから、あれもやります、これもやります、と手を出し、しまいには「何でも屋」になってしまう。。そんな経験で悩まれたことがある方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

実際私は、本当に恥ずかしい話ですが、自分の上司に「なんでもやってくれて助かっているけど、自分のキャリアにおける『コアスキル』を身に付けることがこれからの課題だね」と、ご尤もな、しかし自分では見えていなかったフィードバックを、まさに今年に入ってから頂戴しました。自分でも、その『コアスキル』が何なのか、わからないまま数ヶ月が経ち、この本に出会うことになりました。

この本の中には、自分の得意分野や好きなこと、即ち、伸ばすべき「職能」を見つけ出すヒントが、ワークショップ形式で紹介されています。その「職能」を、大きくいくつかのカテゴリーに分け、どのような職責や作業が伴う職業に向いているかの、ヒントをくださいます。

就活生にとって「なりたい自分」と「自分の得意分野」が必ずしもイコールではないことを教えてくださる書き方になっているように感じましたが、同時に、これは何年もキャリアを積んでいる方にも、試してみていただけるワークショップになっていると思います。

ちなみに、個人的に私はやってみて、この本の中に書かれている「Cの人」即ち、コミュニケーションを得意とするカテゴリーに入ると自己分析をしました。(他がどのようなカテゴリーなのかは、ぜひ本を読んで見てください)

そして、その自己分析結果として、手始めに、このブログを開設し、「得意(と自分の分析の結果思われる)分野を伸ばす練習をしてみよう」と思い立ったのです。いままで仕事で触れる機会は全くなかった、ウェブマーケティングツールをなんとか導入してみながら、毎日、アクセス数がどれくらいか、どのような方に読まれているのか、どの記事が人気があるのか、次にはどんなことを書こうか、などなどを日々考えてみています。

しかし、それよりも、まずは、自分が満足する記事をかきあげた時の達成感(半分以上は自己満足ですが)から、充実した気持ちになったり、「やはりこういう表現にすればよかった」と次の記事の構想への活力が湧いたりしています。このような、自分が達成感を感じられることが、仕事にできるのであれば、それこそ幸せですし、「もっと結果を出せるようになりたい!」と自然と活力が湧きますよね。

記事を書くことを実際の仕事に置き換えて考えると、自分の達成感だけではもちろん認められず、「どんな層の読者に対して、どんな記事を書き、最終的にどれくらいの売り上げに繋げられるか」という結果が求められる構図になっていくのでしょう。しかし、この構図も、頭の中ではわかっているつもりでも、実際に手を動かし、脳内シミュレーションをすることにより、「文章で表現する」ことが、私にとっての得意分野として、伸ばすに値し、ビジネスで成功するかどうかを、客観的に考える機会になっています。ですから、私の中でこの文章を書く時間は、今とても大切な時間の一つなのです。

 

そして、最後に「森岡さんご自身が苦しかった時の話」についてです。私は、森岡さんのような「成功者」は、怖いものがなく、全てが完璧な方なのだと、ずっと思っていました。しかし、森岡さんは、新人の時代から、多くの苦しい経験をして、今でも抱えているトラウマもお持ちで、それでも強く前を向き、様々なプロジェクトを成功させてきたことが伺える一章が盛り込まれています。私は、本を読み進めていく中で、森岡さんの「苦しかったときの話」が、この本の一番の醍醐味だと感じました。

私たちが仕事をしている上で、日々悩まされることについて、森岡さんも同じようにお悩みになられ、ご経験されたことが書かれています。例えば、自分のスタイルとは合わないとわかっているのに、上司の働き方になんとか着いて行こうとして、苦しい思いをすること。誰しもが、成功することは難しいと思っていて、自分も「信じられない」案件を、上からの指示だからという理由で、やり遂げなければいけないこと。そして、慣れない環境で、人間関係を構築し、その中で周囲からの信頼を勝ち取るための苦しい苦しい時期のこと。

それでも森岡さんが前を向き続けられていたのは、キャリアの要所要所で見直されたご自身の「軸とゴール」が常にブレなかったからであり、そのために、自分の「職能=得意分野」を見極め、伸ばすことに徹してきたからなのでしょう。

 

どんな仕事をしていても、壁にぶつかって立ち止まることがあります。自分の能力を疑い、自信をなくすこともあります。不安というのは、「自分が自分を信じられない時に発生するものなのだ」と、この本は教えてくれました。

 

自分が就活生だった時のことを振り返り、その時にこの本に出会っていたとしたら、一体どれくらい理解できたのだろうか。正直1ミリも理解できなかったかもしれません。逆に、今自分が数年ですが、キャリアを築いて読んで感じていることは、これから少しずつ自分の「軸」と「職能」の軌道修正をするヒントを見出す道しるべとなりました。そして、またこれから一定期間を過ぎてから読んで見たら、全く違う発見をするかもしれません。

 

私はこの本は、これから社会に出ようとしている全ての方々、そして、一定のキャリアを積まれた方、今お仕事をされていない方など、いかなる環境にいらっしゃる方にも、人生を豊かに過ごしていくためのヒントをくれると感じています。

森岡さんが、ご自身の「レガシー」として、お嬢様のために書き下ろされたこの本は、日本国民の多くを救い、キャリア構築の重要性を改めて教えてくださることでしょう。その著者である森岡さんへ、しがない一読者として、この場をお借りし、尊敬の意と感謝を表させていただきます。そして、このブログを通してご興味を頂いたみなさん、ぜひ手にとって読んでみてくださいね。